四十年以上に渡って勤め上げた会社を定年退職後、趣味の山歩きと風景写真の撮影にのめり込んでいる父にとって、カナディアン・ロッキーは憧れの地の一つであったようです。そんな父の希望を聞いて、6日間のカナダ旅行を計画しました。留守番するという母は残念ながら日本に残し、私たち夫婦が父の個人的ガイド兼通訳となって同行。AVISのアシストをいただき、アルバータ州バンフ周辺に三人で撮影旅行に行ってきました。

 初日、成田からエア・カナダでバンクーバーを経由しカルガリー到着。バンクーバー~カルガリー間では雲もなく、上空からノコギリのように険しいロッキー山脈がきれいに見えました。父は早くも熱心にシャッターを切っています。この日は空港近くのエグゼクティブ・ロイヤル・インに宿泊。天気予報によると、明日以降も好天が期待できそうです。

 二日目の朝、ホテルをチェックアウト。そして、レンタカーを借りるべく最寄りのAVISの営業所を探すと・・・おお、ロビーの端にAVISがある! と書くと、やっぱりわざとらしいですね。実はあらかじめネットでこのことを調べてホテルを選んだのでした。空港のAVISを利用される方が多いと思いますが、カルガリー市内で宿泊の予定があれば、このホテルとフロントから徒歩ゼロ分のAVIS窓口もお勧めしたいです。混雑しませんし、料金に空港施設使用料も加算されませんし(ケチな話ですみません)。なお、空港からホテルへは無料送迎バスがあります。


AVISはホテルの中にある

 さて、AVISではあっという間に手続きが完了し、お借りしたのはWクラスのダッジ(クライスラー)・デュランゴという車、色は渋めの赤です。荷室は広く、トランク3個と三脚などを入れてもまだ余裕がありました。ドライバーは父。人生で初めての左ハンドル右走行のため、腕慣らしとしてまずはホテルの駐車場をおずおずと一周。その後、いよいよ公道に出てロッキー山脈へと向かいます。


出発前にポーズをとる父

 日本的な感覚だとやや大ぶりの車ですが、既に多くの方が書かれている通りカナダの道は広く、思ったほど運転に苦労はないようでした。高速道路も中央分離帯が広いためほぼ一方通行の気分で、右側通行の緊張も次第にほぐれてゆきます。エンジン音は意外なほど静かで快調な運転。牧草の刈りとられた草原を横切り、西へとまっすぐ伸びてゆくハイウェイ1号線を進みます。天気は快晴、緑の針葉樹と黄色に色づき始めた木々とのコントラストが美しく、父の撮影へ意欲が次第に高まってゆくようでした。


高速道路もリラックスして運転


トランス・カナダ・ハイウェイ1号線の先にロッキーの山並みが見えはじめる(撮影:父)

 風景は平原から山間へと変わり、昼過ぎにレイク・ルイーズに到着。父は飛び出すような勢いで撮影に。我々夫婦は、その間、湖畔のホテル、フェアモント・シャトー・レイク・ルイーズのラウンジで一休み。妻はアップル・シュトゥルーデルがおいしいとご満悦の様子でした。宿泊はフェアモントでなく(笑)、近くのディア・ロッジで。小ぶりですが瀟洒なロッジで、丹精込められた花壇がきれいでした。


レイク・ルイーズの湖畔のボート乗り場(撮影:父)


ディア・ロッジの中庭

 このディア・ロッジを基地として、三日目は高速道を東に戻ってバンフへ、四日目はアイス・フィールド・パークウェイを西のコロンビア大氷原までドライブ。ドライブではありますが、父の「あ、いい風景だなあ、ちょっと止めて撮すぞ・・よし、機材を片付けて出発、あ、またいい風景だ、ちょっと止めて・・」の繰り返しです。森に囲まれた青い湖があり、巨大な氷河の残る山々があり、迫力のある切り立った断崖があり。ありきたりな言い方ですが、雄大な大自然の風景が次から次へと続き、退屈する暇がありませんでした。バスの旅や団体旅行では移動の途中は車窓から流れる風景を見るだけになってしまいますから、好きなところで車を止め、好きなだけ撮影できるというわがままが叶うのは、やはりレンタカーの個人旅行ならではです。


車を止めて撮影


ペイトー湖を見下ろす展望台で


氷河にて(撮影:父)

 父が最も気に入ったのは、バンフ郊外のバーミリオン湖周辺の夕景のようでした。夕日に浮かぶ標高3000m近い山々を背景に、鏡のように静かな湖面に色づいた周囲の草木が映ります。実際、有名な撮影スポットのようで十数人のカメラマンが集まり、英語のほか、中国語、ドイツ語、日本語なども飛び交っておりました。各地から集まった写真愛好家たちは、父も含め、互いに「ハロー」と簡単な挨拶を交わすくらいで、話し込むようなことはないのですが、それでも互いの機材にちらりと目をやって確認したり、よい撮影場所をめぐって譲り合ったり牽制したりと、無言のコミュニケーション。風景が美しかったのはもちろんですが、こうしたやりとりを端から見るのも楽しい経験でした。


薄暮のバーミリオン湖でカメラを構える


バーミリオン湖(撮影:父)

 バーミリオン湖からの帰り、バンフの街外れの草むらの前の道にちょっとした人だかりを見つけました。車も数台止まっています。何だろうと草むらに目をこらすと、野生の鹿の群れでした。もちろん父も車を止め、人の輪に加わってカメラを構えます。


鹿を眺める人々

 夕闇がせまり、さてもうこの辺でと切り上げて車を出発させた頃、鹿の群れが移動を開始。バンフ市街と高速道とを結ぶゴーファー通りを鹿たちがゆっくりと渡りはじめました。通行の車は停止して、鹿の横断を見守ります。薄暮の中ヘッドライトに照らされてゆっくりと鹿の群れがアスファルトの道を横切るのは、この上なくフォトジェニックな光景でしたが、残念ながらカメラが間に合わず。リアウィンドウの闇に消えるのを首をねじって見送るよりほかなく、シャッターチャンスを逃してしまった父はずいぶん悔しがっていました。

 五日目、宿をバンフに移します。父は「撮影はもう十分だから、今日はなるべくゆっくりしよう。」 七十一歳にしてはアクティブで、ひょっとすると我々より体力があるかもしれない父ですが、連日の早朝から夕方までの活動でさすがに疲れたのでしょうか。しかしいざ車で出発すると、やっぱり「あ、いい風景だ、ちょっと止めるぞ・・」が再開。苦笑するばかりです。


ボウ・バレー・パークウェイの途中にあるベーカー・クリークでひとやすみ

 今日のバンフへの道は高速道でなく、ボウ・バレー・パークウェイを選んでみました。一般道ですが、道の両側にはずっと閑かな林が続き、人家や商店はほどんどありません。車通りもそう多くなく、こちらも快適なドライブでした。途中、ベーカー・クリークという、林の中に赤い屋根が目立つロッジで小休止。屋外灯の支柱に鹿の形のシルエットを発見。灯りのシェードが鹿の形にくり抜かれていて(凝ってるなあ)、日光でたまたま影絵が柱に映っているのでした。


ランプ・シェードの鹿のシルエット(撮影:父)

 バンフ到着後は一昨日と同じくバーミリオン湖に向かいます。多少期待はしていたのですが、今日は鹿の群れに会うことはできませんでした。そうそう人間の都合に合わせてはくれませんね。

 翌朝は早起きしてカルガリーに向けて出発。2時間ほどの快調なドライブでカルガリー空港に到着し、AVISに車を返却。ドライブムービーそのまま(http://www.avis-japan.com/drive/index.html)に案内標識に従ってゆくだけですぐに車庫に到着し、本当に何の心配も要らない簡単な返却でした。五日間で途中給油は一回、走行メーターはちょうど900Kmになっていました。

 こうして特にトラブルもなく、好天にも恵まれ、紅葉の始まった美しいロッキー山脈で快適な撮影旅行を全うすることができました。「面白かったなあ」と父も満足してくれ、AVISのおかげで無事、親孝行(というと気恥ずかしいですが)できたようで私たちとしても喜んでいます。一連の手続きはスムーズでしたし、車もよかったので、また海外でレンタカーを使うことがあればAVISにしたいと思っています。